継承歌 野末の露

 

毎年4月に執り行われる大沢町戦没者追悼慰霊祭。そこで地元合唱団「やまびこ会」の方々によって合唱される「野末の露」についてご紹介したいと思います。

合唱組曲 『野末の露』を作曲して

 大沢校在任中、大沢町上大沢にお住まいの幸田さんがお書きになった、大東亜戦争ビルマ派遣従軍記『野末の露』を読む機会がありました。戦場で九死に一生を得て生還された手記です。六十五年前、この大沢町でも八十余名の方が戦死されました。

 

 この方たちは家族を思い、国を思い、平和と繁栄を願って戦場へ赴かれました。私は子供たちに、このことと、戦争の愚かさ、命の大切さを伝えたくて手記の「野末の露」に基づいた合唱組曲を作り、音楽会で歌い継いできました。

 

 作品は「来る日も来る日も」「野末の露」「よう帰ってきたな」「やすらぎの丘」の四曲から成っています。歌詞は原作本文の文章をつなぎながら、一九四五年敗色濃いビルマ戦線で雨季の密林を敗走する隊の衛生兵として、職務と飢餓と疫病、さらに敵の銃弾にさらされながら、さまよい歩いた一六〇〇キロの道のり、終戦を迎えやっとの想いで仲間のところにたどり着いた場面、そして今の私たちの生活はこのような犠牲のもとで営まれていることなどで構成されています。

 

 戦後六十年目の慰霊祭が大沢町の「やすらぎの丘」で執り行われた折、大沢町のみなさんで再びこの作品を歌う事になりました。今年も四月二十一日にやまびこ会の皆さんと歌える事を心から嬉しく思っています。

 

 戦争のない世界を願って。


 松下行馬

 

 

 

 

 

 

 

 小学校音楽教諭 松下行馬先生

情熱的で熱心な指導される松下先生。

『野末の露』の他に『この町が好き』等、地域の為の合唱曲を多く作曲され、地域にとって掛け替えの無い先生です。

継承歌 野末の露

音声のみ:再生する際には音量に注意してください

松下行馬先生指揮 大沢やまびこ会の方々による合唱

上田豊子さん 大東恵子 大東すみゑ による 間奏のことば

平成18年録音

野末の露 歌詞

作詞 幸田 貢

作曲 松下 行馬

《来る日も来る日も》

 来る日も 来る日も 雨の中

 山を越えて 谷渡る

 米も塩も 尽き果てて

 道なき道を 進む迷路

 前後空より行く手をはばまれ

 大きな音が 響きわたる

 激しい 集中砲弾 無数の弾の雨

 コレラ アメーバ赤痢 マラリア デング熱

 仲間たちが 次々と

 仲間たちが 次々と 力つきて 倒れてゆく

 来る日も 来る日も 雨の中

 山を越えて 谷わたる

 明日は 誰が落伍するかは 知らない

 身は 疲れ果て

 生死の境を ふらふらと歩く


《野末の露》

 特に生きていたいとも 思わない

 死ぬきりが無いから 生きているだけである

 人間 極限の境地とは こんなものである

 清らかな 野末の露である

 小さくとも キラキラと輝いている


《よう帰ってきたな》

 よう帰ってきたな よう帰ってきたな

 友の迎えに 涙溢れる

 声もなく 堅く手を握り合う

 痩せ衰えて 頬は落ち 目は窪んで

 髭は伸び 杖を頼って歩いた

 千六百キロの道のり


《間奏の言葉》


《やすらぎの丘》

 海・山に華と散りにし 益(ます)荒(ら)雄(お)の

 御霊留めむ やすらぎの やすらぎの丘

 

合掌












松下先生の指揮の下

大沢やまびこ会の方々の合唱する歌声が大沢の里山にこだまする

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伝えたい、大沢町出征兵士からのメッセージ
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